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予防歯科と全身の健康との関係。 その7、 関節リュウマチ。

 予防歯科についてのお話しですが口腔内の細菌は体全身に影響があるので、今回は関節リューマチとの関係についてです。

 体の中で多くの細菌が棲息しているのは「口」の中と「大腸」の中です。両者には膨大な数の細菌叢があります。細菌の数では大腸の中の腸内細菌が圧倒的に多いですが、その生息密度は口の中の方が高いです。両方ともに、数百種類以上ある細菌が互いにバランスを取って生存しています。バランスがとれていれば宿主であるヒトと複雑な相互作用を形成し恒常性を維持し健康状態を続ける事が出来ます。

 ところがその中で強い病原性の細菌が増えるとそのバランスが崩れ、口腔内では虫歯や歯周病が発生します。ご存じの通り、これはやがて歯を失うことに繋がります。しかしこれだけではありません。

 近年の研究では、口腔内細菌のバランスの崩れは腸内細菌叢のバランスにも影響を与え、混乱させることが分かってきました。即ち口腔内で虫歯や歯周病が起こっている状態は腸内細菌叢をも狂わす事が報告されています。

腸内細菌の活動内容は、まだ僅かですが最近少しずつ明らかになってきました。これ等のバランスが取れていれば、病原菌の異常増殖を抑えて感染を防御したり、ビタミンを生産し、全身の免疫系,代謝機構に積極的に働いています。つまり腸内細菌叢は全身の健康に多大な影響を与えている事が徐々に分かってきました。その本来の働き、全身の体のバランス、恒常性を保つ為に決定的な役割を担っているのですが、様々な原因・誘因により、体を攻撃する側に回ってしまう事があり、その結果色々な病気を起こします。その原因の一つが口腔内の病原菌なのです。

 口の中に生息する常在菌の数は、計り方にもよりますが、だいたい1兆個前後と言われています。対する腸内細菌の種類は1000種類、その菌数はおよそ100兆から1000兆個以上ですから大変な数です。人間の体の細胞の数はおよそ70兆個ですから優にそれ以上の個数です。これ等の膨大な常在菌は互いに影響し合いながらヒトの体の健康の為に積極的に働いてくれています。ビタミン、ミネラルの消化吸収や有害菌の除去にまで関与しています。

 ところが口腔内には病原性が強い細菌が沢山増える傾向があります。これが口の中の病気を引き起こしますがそれだけでなく、腸内細菌のバランスに悪影響を与えて全身の疾患の原因にもなっています。この細菌学的・疫学的研究は近年途に就いたばかりで、その状況のほんの一端が分かりかけてきた状況の様です。その全貌が明らかになるのは何時になるか、だいぶ先になるかもしれませんが、それが分かったら驚くべき事実が次々に発見され、人体の精巧な仕組みにあらためて感嘆するかもしれません。

 今回の課題のリューマチは特に手足の指の関節に激痛と変形を伴う病気ですが、関節を支える滑膜に炎症が起こり、関節の破壊や骨の癒合になる恐れがあります。これは左右両側に起こり易く、更に進むと肘や肩の関節に病変が及ぶ事もあります。また発熱があり、疲れやすく食欲の減退などの全身症状に広がるのも特徴です。

これはいわゆる自己免疫疾患です。即ち、ヒトの免疫の本来の役割は自分の体を守ってくれる大切なシステムですが、ここに異常が起こると自分のからだの一部が自分を攻撃する異物と誤って認識し、対抗処置をとってしまいます。つまり自分の体を排除、或いは攻撃して結果的に病変を起こします。本来は自分を守るはずのものが、自分を攻撃するのです。このような異常事態を招く一つの重要なきっかけが繰り返しになりますが、腸内細菌叢のバランスの崩壊と言われており、これを招くのが口腔細菌叢のアンバランスでもあります。

人間の体はものすごく精妙で且つデリケートです。まるで薄く切り立った山の尾根を歩み続けるようなもので、ちょっとでも足を踏み外すと危険な状態になります。ですから歯磨きは口の中だけでなく、体全身の健康にも大きく寄与している事も心得ておくべきでしょう。歯周病は関節リューマチのリスクが高いと言われているので注意が必要です。

 

                                 成城学園前 鈴木歯科医院